在日コリアン、おきらいですか?

「在日コリアン、おきらいですか?」というはてなダイアリーを書いていましたが、この度ブログに移行しました。

朝鮮民族を読み解く―北と南に共通するもの/古田博司

北朝鮮・韓国ともに近代化に向けてじつは共通の苦闘を演じてきた。宗族を中核にした自分たち「ウリ」とそこから排除された他人たち「ナム」との間の深淵をどのように埋め、国民国家としての一体感を形成するのか?かたくなな「儒」の世界と大らかな「野」の世界に接点はあるのか?「恨(ハン)」はいかにして解けるのか?朝鮮文化の根底にある思考行動様式を、日常生活にさまざまに現れた具体的なエピソードを通して、初心の者のみが抱きうる素朴な疑問・関心をテコに、鮮やかに読み解いた、平明で奥深い朝鮮文化入門書。

朝鮮民族が語られる際に出てくる「恨」「朱子学」「事大主義」などなど、なんだかわかったようなわからないような用語の数々を、学問的にあるいは著者の実体験を通じて少しずつ概略的に解説してくれるこの本。
良くも悪くも朝鮮民族に興味がある人、あるいはボクのような在日コリアンは「へー。へー。へー。」と思わず口にしてしまうかも知れません。


著者は自らを『朝鮮オタク』と任ずる方で、(後に在日コリアン女性と結婚してはいますが)在日コリアンには興味も関心もなく、純粋に『朝鮮』に関する興味・好奇心から朝鮮思想史研究の道を選択したという、どうにも変わった経歴をお持ちです。
したがって、この本には在日コリアンを絡めた話はほとんどなく、純粋な朝鮮半島思想史・文化史入門書と言えるのではないでしょうか。
北朝鮮・韓国の双方に対して極めてイーブンな視線を送っていることが、すぐにわかると思います。

  • 韓国では、一人で食事をするものがほとんどいない
  • 韓国では、商売人や接客業者は蔑みの対象である

なんて、話には聞いたことがあるけれど、「ホンマかいな??」と思っていたような事柄に次々と解説がなされていき、これまた「へー。へー。へー。」といった感じになります。




この著者さんは、本当に朝鮮が好きで好きで仕方がないようで、次から次へといろんな面白話を紹介してくれるのですが、ボクがぶっ飛んだのは以下のお話。

韓国の民間芸能とはどのようなものか、(略)韓国安東の河回ムラに伝わるタルロリ(仮面劇)の一節を次に紹介しよう。


若い寡婦であるプネが物陰で小便するところからこの一幕は始まる。小便をしているところを僧侶が目撃し、プネの去った後、僧侶は地面に顔を寄せ、土を手に取りその匂いを嗅ぎだすのである。匂いを嗅いだ僧侶は次のような台詞を言う。


『ウフフフフ、アイグー、匂いだ。アイゴー、濡れておるわ。』

欲情した彼は経文を唱えながらプネに近付いて行き、ついに笠を脱ぎ捨て、破戒してしまう。

(略)



嗚呼、なんと下品なのだろうか。筆者などはワクワクするのだが、これが大韓民国国宝第一二一号に指定される河回ムラの仮面によって舞われる仮面劇なのである。

・・・古田先生、これ先生が作った話じゃあないんですよね??





とまあ、こんな具合で堅い話から柔らかい?話まで織り交ぜつつ、朝鮮半島における思想・文化を紹介していってくれますので、一気に最後まで読むことができます。
興味のある方は是非一度お試しください。




最後に一つ。
著者も述べていますし、ボクの実感でもありますが、この本で紹介されている思想・文化は在日コリアンには当てはまらない場合が多いです。
在日は基本的に日本の思想・文化にどっぷり漬かって生きてますので、『恨』とか言われてもさっぱりんこですよ。

ボクも上で出てきた僧侶のような特殊な趣味は持ち合わせておりませんので、そこの所は強調させていただきたく思いますm(__)m