在日コリアン、おきらいですか?

「在日コリアン、おきらいですか?」というはてなダイアリーを書いていましたが、この度ブログに移行しました。

かぞくのくに

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在日コリアンのソンホは総連の重役を務める父の勧めに従い、当時「理想郷」と称えられていた北朝鮮の「帰国事業」に参加し半島に渡り、現地で結婚し子供も生まれたが、離れ離れとなった家族の再会は果たされていなかった。
それから25年、ソンホの一時帰国が実現する。ソンホは脳に悪性の腫瘍を患い、その治療のため、3ヶ月の期間限定で日本滞在が許されたのだ。久々の再会に妹のリエや母ら、家族は歓喜し、ソンホを暖かく迎え入れる。だがソンホには常に同志ヤンが付き従い、その行動を制限・監視していた。
検査の結果、ソンホの治療は3ヶ月では足らず半年以上の入院が必要だと告げられ。手術を断られてしまう。なんとかソンホの腫瘍を治療させようとリエがソンホの幼馴染で医者に嫁いだスニに相談していた矢先、朝鮮本国より突然の帰国命令が下る。


以前から気になっていたこの作品、ようやく観る機会を得ることができました。


在日コリアン2世である梁 英姫(ヤン・ヨンヒ)監督の実体験を元にした映画、ということもあり、在日コリアンならば「あー、わかるわかる」と思わず頷いてしまうようなリアルな描写が随所にありました。
ボクの故郷よりはかなり小奇麗ではありますが、在日コリアンが集まり住んでいる「部落」っぽい雰囲気。
日本語訛りが強くて、表現がいちいち「堅い」在日コリアン独特の「朝鮮語」。
総連バリバリで生きてきた主人公の父親(アボジ)。
料理が上手でひたすらに優しい母親(オモニ)。
兄とは思想的に合わず事業に勤しむ叔父。
北朝鮮や総連の思想とはまったく相容れないまま生きる道を模索している妹。



本当に一昔前の朝鮮部落を観ているような、そんな気分になる映画でした。









ボクの育った家庭は、幸か不幸か思想的にはとっても緩く、リベラルと言えばリベラルな、いい加減なと言えばいい加減な、まあどこにでもあるような普通の家庭でしたが、近所にはこの映画のように総連の職員(イルクンといいますが)をしていて、金日成・正日親子の写真が飾っている家もあったりしました。
といっても、彼らはそれほどメジャーな勢力だったわけではなく、「在日用語」でいう所の「思想(ササン)が入ってる」人達として、半ば敬われ半ば揶揄されるような、そんな感じの微妙な存在だったような気がします。













ボクが生まれる前の話ではありますが、我が一族にも「帰国事業」で北朝鮮に「帰る」可能性があった、と聞きます。
具体的な計画が浮上した事もあったそうですが、我が父親の「類まれなる野生の勘」で「帰国」は回避され、その結果、祖父母の代からカウントすればかれこれ一世紀くらい日本に住んで現在に至るといったカンジになっています。


ボク自身朝鮮学校を卒業してはいますが、現在の北朝鮮における独裁体制には反対で、一刻も早い民主化を望んでいますが、ごくごく近い親族が彼の地にいる人たちなんかは、そういった高邁な理想よりも、ただただ家族の無事を祈るのみといった心境になってしまうものなのかも知れません。
「世界や国を俯瞰する大きな視点」と「一人一人に注がれる小さな視点」。
そんなことを考えてしまう映画でした。




北朝鮮からの監視役、ヤン同志。
最初のうちはただただ憎たらしいヤツだと思っていましたが、彼もまた小さな視点で眺めればか弱き一個人に過ぎないのでしょう。

おまえの嫌いなその国で、兄さんも俺も生きてるんだ、死ぬまで生きていくんだ

というセリフがなぜだか心にひっかかっています。